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生活者の視点が欠落している不振マンション

三井不動産「柏の葉」を見習って欲しい

 

 前回、大手デベロッパーのマンションの売れ行きがいいのに対して、中堅デベロッパーの物件には根雪≠フように売れ残るものが少なくないことを書いた。

 レベルの差と言ってしまえばそれまでだが、今年前半の供給物件で飛びぬけて素晴らしかった大手の物件について少し触れてみよう。

 坪単価340万円の東京建物のコンパクトマンション「ブリリア武蔵小山 id 」、坪単価470万円の野村不動産「プラウドタワー千代田富士見」、三井不動産「パークシティ柏の葉キャンパス一番街」、鹿島建設「加賀レジデンス」などだ。

 「武蔵小山」は、単身者やDINKSが飛びつきそうなデザインだったし、「千代田富士見」は、アッパーミドルや富裕層に圧倒的な支持を受けた。立地・グレードが素晴らしかったからだ。昨年、同社が三井不動産、三菱地所と共同で分譲した「ザ・センター東京」が人気になった時点で、「千代田富士見」も売れるだろうと記者は見ていた。

 「柏の葉」は、TX沿線の中で唯一、中長期的な展望が開けている街で、単にマンションを売るだけではなく、他社にはできない産・官・学が連携した街を売る<Rンセプトが素晴らしい。「加賀」は、坪単価250万円の新価格だが、不動産のプロも絶賛するマンションだ。

 これらの物件と対極にあるのが、根雪≠フように残りそうなマンションだ。

 根雪<}ンションの具体的な物件名は書けないが、企業業績に大きな影響を与えそうな大型の不振物件もいくつか見た。

 不振物件に共通しているのは、デザインが最悪で誰に売るのか≠ェまったく伝わってこないということだ。取って付けたような子育て≠テーマにしてもユーザーが支持するわけがないし、他社物件の新価格に便乗しただけの何のとりえもない物件が売れるわけがない。

 細部のスペックの手抜きも不振物件には目立つ。引き戸を例に取ってみよう。

 引き戸そのものは、ユニバーサルデザインの点でも、デッドスペースを生まない点でも素晴らしい。難点なのは、音の問題だ。引き戸を閉めたときかなりの衝撃音が生じる。ストッパー機能をつけるべきなのだが、残念ながらストッパー機能付きの引き戸を採用している物件は極めて少ない。

 中堅どころでストッパー機能付きの物件を供給しているのはマリモやヒューマンランドぐらいだろう。鴨居の溝に鉄製のストッパーを取り付けただけのものだが、住まい手に対する配慮が伝わってくる。コストもほとんどかかっていないはずだ。

 これはこれで素晴らしいのだが、三井不動産「柏の葉」は、より優れたなストッパー機能付き引き戸を採用していた。それは鴨居の溝にストッパーをつけるのではなく、戸当たり部分の溝を狭めたものだった。これはスグレモノ≠ニ、記者は歓声を上げたぐらいだ。

 「柏の葉」は、このほか天井高約2.6bのリビングダイニング、全戸奥行き3b以上のバルコニー、天然木の床フローリング、メーターモジュールの廊下、バリアフリー対応ドアストッパー、指ハサミ防止ストッパー付サッシなども採用している。

 三井不動産はここまでやっている。「優れているものを全て説明するのが大変」と営業マンが嬉しい悲鳴をあげるのも無理はない。

 購買力が追いつかない∞お客の年収が低い≠ネどと嘆く前に、もう一度、生活者の視点で商品企画を考えるべきだろう。このままでは大手との格差は広がる一方だ。

 

(牧田 司記者 8月8日)

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