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旭化成ホームズ 二世帯住宅研究所

「親子同居スタイル・多様化の実態」調査

 

 旭化成ホームズ二世帯住宅研究所が「親子同居スタイル・多様化の実態」をまとめ発表した。以下は、弊紙編集スタッフ・工藤枝里香が記者会見に臨み、まとめた初めての記事だ。書き出しの主語は「旭化成ホームズ」ではなく「私(工藤)」となっているのがとても新鮮に映った。本来、取材記者がいつも持っていなければならない姿勢だ。文章はほとんど手を加えていない。

左から長山教授、熊野氏、松本氏

 平成19年7月31日(火)行われた旭化成ホームズ二世帯住宅研究所(所長:熊野勲)「親子同居スタイル・多様化の実態」調査 記者発表会に参加した。

 研究発表を熊野勲氏(同社住生活総合研究所長兼二世帯住宅研究所長)、松本吉彦氏(旭化成ホームズ二世帯住宅研究所 主席研究員)が行った。オブザーバーとして長山洋子・文化女子大学造形学部住環境学科教授が参加した。

 同調査は二世帯住宅だけではなく、単世帯住宅も含めたベーベルハウスに「現在親子同居している入居者」を対象に、ヘーベリアンネットに登録している人に E メールにてアンケート依頼をし、 Web による調査を実施したものだ。アンケートの有効回答数は981。

 少子高齢社会の進展を背景とした「親子同居スタイルの多様化」の実態を調査し、家族や建物の状況と同居スタイルや満足度との関係把握を目的としている。

 調査では、片親との同居(43 %)や4人以下の少人数同居(28%)が思っていた以上に多いことや、娘夫婦同居スタイルがかなり一般化(親世代が50歳代という若い世代では49 %)してきたという実態が分かった。

 この調査でもっとも注目されたのは、「夕食の独立 / 融合」という同居スタイルの違いについてである。各世代が独立して別々の場所で夕食をとる「夕食独立」の同居スタイルが57%、同じ場所で夕食をとる「夕食融合」の同居スタイルが43%を占めた。

 この「夕食の独立 / 融合」の違いは朝食、洗濯、光熱費の分担といった他の同居スタイルとも深く関係しており、夕食独立の場合は他の項目でも強い独立志向が見られた。また、「夕食独立 / 融合」と家族構成との関係を見ると、片親同居、少人数同居、娘夫婦同居ではいずれにおいても融合志向が強い傾向が見られた。

 「夕食の独立 / 融合」と建物分離度との関係では、基本的に夕食が別々である「夕食独立」同居の場合は、玄関やキッチン・水廻りなど総ての設備を2カ所備えた「独立二世帯住宅」か、キッチンが2カ所で玄関が共用の「共用二世帯住宅」が大部分であり、共用二世帯より独立二世帯の方が満足度が高い傾向にある。

 一方、基本的に夕食が一緒である「夕食融合」同居の多くはキッチンが1カ所の「単世代住宅」か、メインキッチンの他にサブキッチンを備えた「融合二世帯住宅」であり、単世帯より融合二世帯の方がより満足度が高いという結果がでた。

 長山教授は本調査の意義として以下の4点をあげた。

•  家族構成やライフステージと二世帯同居のスタイルの傾向を見出したこと

•  同居に至る理由を居住者の生の声から拾い出していること

•  夕食の独立・融合と同居のスタイルの関係を見出したこと

•  夕食が一緒であっても洗濯等のプライバシー意識の高い行為は別々に行われる場合があることを見出したこと

 また長山教授は、二世帯住宅を建てる際に重要なポイントを「夕食の独立/融合」にあるとした。同研究所も「 “夕食の独立/融合”をポイントにして考える」と答えた。

 さらに、“洗濯”で分かるプライバシー意識が今後の住宅プランニングにおいて重要になる点であるとした。たとえ、夕食融合型でも洗濯は別に行うという同居スタイルがある。洗濯機は二台ある方がより満足度があがるのだ。

 長山教授が行った、女子大学生約50名に将来結婚したら、「親と暮らしたいか」の質問に約6割が「プライバシーが心配なので一緒に住みたくない」と回答したという。「暮らしたい」「暮らしても良い」と答えた約4割は自分の親と暮らすことを希望し、子育ての協力を求めているようだ。

 今後の少子高齢化が進む中で、昔のような『二世帯住宅(大人数で住む)』という意味合いでのスタイルが変わっていくと考えられる。

 片親同居、少人数同居が既にかなりの比率を占めていることから、今後の二世帯住宅市場の展開が注目される。

 そして、同調査で注目した「融合二世帯住宅」のニーズが今後広がっていくことを予想し、記者発表会は幕を閉じた。

                                (工藤枝里香)

 記者も報告書を読んだが、「洗濯に見る同居のプライバシー」の項目が興味深かった。女子大生とその親の本音が出ているからだ。以下に報告書から抜粋する。

 「プライバシーを必要とする度合いを測る尺度として『誰の下着を洗濯できるか』『誰に自分の下着を洗濯してもらってもよいか』を聞いた。夫の父母の下着の洗濯に違和感がない約6割の子は、浴室の共用にも寛大であり、逆に親に自分の下着を洗ってもらうことにお互い様と言う意識がある。同様に息子の嫁の下着の洗濯に違和感を持たない約7割の親も洗濯機や浴室の共用には寛大であるが、息子の嫁の下着を洗うことに違和感を持つ残りの3割の母親は、共用にも反対であることが多かった。しかし実の母娘の場合は、9割以上がお互いの下着を洗うことに違和感を示さなかった」

 記者が会見に同席していたら、きっと次のような質問をしただろう。「息子の嫁の下着を洗うことに違和感を持つ残りの3割の母親は、それでは、娘の夫の下着を洗うことに違和感はあるのかどうか」と。

 

(牧田 司記者 8月3日)

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